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「インビクタス」を観て [映画]

クリント・イーストウッド監督の「インビクタス」を観ました。01b46b231207a9cca52fafa9348338c4.jpg
 先ず感想を一言、随所に清々しい感動のある素晴しい映画である事は間違いないのですが、私個人としては思い入れの強い「ラグビー」を主題にしていていながら、ラグビー・スピリットについてあまり触れられていないのは期待はずれでした。しかし試合の場面が最高にリアルで迫力があり、観ていて思わず力が入ってしまうなど、近頃珍しく同化してしまいました。決勝のオールブラックスの「ハカ」も見事で、かつて生でオールブラックスの試合を見た時の事がまざまざと甦ってきました。私が選考委員なら文句無しにアカデミー作品賞、主演男優賞、助演男優賞に推したいところです。

インビクタスとは「負けざる魂」という意味のラテン語だそうです。
新生南アフリカの大統領となったネルソン・マンデラが「人種差別反対運動」のリーダーであるが故に政治犯として捕えられ、27年間もロベン島刑務所に服役していた時、折れそうになる心を鼓舞したのが一編の詩との出会いでした。その詩のタイトルが「インビクタス」。映画の中では触れられていませんが、この詩のもとは英国の詩人ウイリアム・アーネスト・ヘンリー(1849-1903)が「生と死」を主題に詠んだものだそうです。作者は12歳で脊髄カリエスから結核菌が転移した片足を切断。それでもオックスフォードに合格し、26歳の病床でつづったソネット16行の一編です。日本語訳は以下の通り。

 私を覆う漆黒の闇
 鉄格子にひそむ奈落の闇
 私は あらゆる神に感謝する
 我が魂が征服されぬことを

 無惨な状況においてさえ
 私は ひるみも叫びもしなかった
 運命に打ちのめされ 血を流しても
 決して屈服しない

 激しい怒りと涙の彼方に
 恐ろしい死が浮かび上がる
 だが 長きにわたる 脅しを受けてなお
 私は何ひとつ 恐れはしない

 門が いかに狭かろうと
 いかなる罰に苦しめられようと
 私が我が運命の支配者
 私が魂の指揮官

 この作品中には「INVICTUS」の文字は見られないそうです。この詩の題を「INVICTUS」としたのは、ペンネームQで詩や評論を書いた英国のアーサー・キラークーチ卿(1863-1944)で、卿が編んだ「Oxford Book of English Verse1250-1900」に収載する際に冠したものだそうです。ともあれこの詩が、獄中のマンデラの魂に共鳴し、彼のその心が南アのラグビー・チーム「スプリングボクス」を鼓舞し、ラグビー・ワールドカップに奇跡の栄光をもたらしたというわけです。このチームの主将フランソワ・ピナールが試合前にロベン島監獄を見学した時、現大統領が収監されていた狭い部屋に入り、マンデラの心に想像をめぐらせ、この詩の意味を悟ると言うシーンがマット・デイモンの好演もあって印象的でした。

映画「沈まぬ太陽」 [映画]

実は公開の翌々日だったでしょうか、この映画を観たのは。
この時期、仕事でも、ボランティアでも結構忙しくて、とてもこの映画を観たなんて身近な人に知られたくなかったので、こっそり「愛人」と行きました。
前から山崎豊子は好きな作家で、原作も読んでいましたので待ち遠しかった作品でしたが、やはり期待に違わぬ「骨太」のがっしりした映画でした。久々に映画の醍醐味を感じ、余韻に浸ることができました。

冒頭のジャンボ機遭難の場面は胸がつまる思いでしたが、少し前に観た「クライマーズ・ハイ」との比較で、相通じるものがありました。とは言っても、山崎 豊子と横山 秀夫二人の作家の描く視点の違いは興味深いものでした。前者の方がより犠牲者に寄り添っていると感じます。
しかし、見終わってしばらくしてじんわりと胸の中に広がってきたこの映画のテーマは、やはり恩地 元と行天四郎という同期の人物の生き様の際立った対比でした。

原作とは少し違う部分もありましたが、底流としては「あの同時代」の先を走る青年達の生き方です。
もちろん小説ですから「実在の人物とは一切関係ない」のは当然ですが、この会社に限らず、似たようなケースがあることは、私自身18年ほどの会社勤めの中で経験したものと重なります。
人の運命というものは、常に二面性を持っているものであり、その交差点ですれ違った人それぞれに色んな人物評が出てくるものだと思います。

この原作に対しては出版当初絶賛とともに、いろいろと批判もなされていることは知っています。
しかし、私にはこの恩地のモデルとなった人物、小倉寛太郎(ひろたろう)氏の1999年、東大駒場祭における講演を知る機会があり、氏の「生き方」についての「語り方」に真実を見るものとして、多く共感を覚えるものです。
作家山崎豊子に対する批判者たちの多くが「ある傾向」を持った人物である場合が多く、幅広い人々の支持は受けていないと思いました。

マジックアワー [映画]

私の部屋の窓から見える五稜郭タワーです。2513441javascript:;

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